春よ恋・・・ サクラサク・・ と、世間ではもうすっかり春ですね。
今年も大阪の冬は暖冬でした。
街路樹の桜も、一雨ごとに蕾が膨らみ3月末には満開になるでしょう

さて、先週開催されました、第6回日本歯科骨粗鬆症研究会学術大会
総会に参加してまいりました。
当日のレジュメより、基調講演、特別講演、シンポジウムをご紹介させていただきます。
歯槽骨骨粗鬆症という病名は現在ありませんがそういう考え方が必要と感じた次第です。
基調講演Ⅰ
『カルシウム・パラドックスと歯科診療』
藤田拓男先生
日本歯科骨粗鬆症研究会理事長
神戸大学名誉教授葛城病院名誉院長
歯は骨と並ぶ主要な硬組織であり、人体のCaの99%以上を含み、咀嚼や運動に必須な組織の強靭性を維持するだけでなく、Caの巨大な貯蔵庫として、細胞情報伝達機能の原動力となっている。健康を保つ為のCaの必要量は、一般に考えられているより遥かに多く、人類の全てがCa欠乏状態にあり、火山灰土壌で軟水が多く、牧畜の伝統が無く乳製品使用の少ないわが国では特に甚だしい。
Caの不足は血清Cαを一時的に低下させ、これが心臓や脳の機能障害を介して生命の危険を来たすので、副甲状腺ホルモンの分泌が増加し、破骨吸収が増加して大量のCaが放出され長期にわたると骨粗髭症を起すと共に、Caの真空状態が正常機能の維持に必要な関節軟骨、血管壁、神経、更に免疫、内分泌、脂肪細胞等各種細胞の内部では逆に急激なCa増加と機能障害を起す。これが変形性関節症、高血圧・動脈硬化、認知症等の神経変性疾患、悪性腫瘍の発生と関連する。全身的にCa不足の時、細胞内で逆にCaの洪水が起こることは一見矛盾しておりCaパラドツクスと言われる。老化の本質はCaパラドックスであり、加齢に伴う筋カ低下、肥満、痛覚亢進もこれで説明できる。
歯科におけるCaパラドックスの例としては、顎骨の骨粗髭症に他ならない歯周病、口腔内に常に充満する多くの微生物、細菌や真菌等に対する感染症と免疫反応の異常、異物や外傷に対する修復反応の異常、種々の口腔内悪性腫瘍、更に最近骨粗髭症等に汎用されるビスフォスフォネートの使用と関係があるとされる顎骨壌死があり、ビスフォスフォネートは骨からのカルシウムの流出を抑制する為、殊にCa欠乏を起しやすい。
基調講演Ⅱ
『骨粗髪症の発症メカニズム』
竹内宏先生
目本歯科骨粗髭症研究会第6回学術大会長
朝目大学副学長,同歯学部病態医療学講座・口腔病理学分野教授
顎顔面領域にも無縁ではない骨粗鬆症は,①閉経性骨粗鬆症(I型)、②老人性骨粗髭症(Ⅱ型)、③ステロイド性骨粗髭症(Ⅲ型)の3種類に大別されている。これらの骨粗髭症のいずれのタイプも、発症機転の中心をなすのは、破骨細胞と骨芽細胞による骨の代謝平衡関係の破綻で生じる骨吸収の亢進である。
骨の代謝平衡は、骨芽細胞と破骨細胞のカップリングによる。
このカップリングは、骨芽細胞による破骨細胞の分化誘導と機能調節から始まる。その誘導因子は骨芽細胞が発現するRANKL(Receptor Activatorof Nuclear Factor κBLigand)で、破骨細胞の前駆細胞受容体のRANKがこれを受け取ると、成熟破骨細胞に向かって分化を促進され、成熟破骨細胞が受け取ると骨吸収が促進される。
さらに骨芽細胞は、OPG(Osteoprotegerin)をも発現し、この分化と機能の調節因子として作用することによって代謝平衡に加わっている。
このOPGはRANKLのデコイ受容体で、RANKLとRANKとの結合を競合的に阻害し、その結果として、破骨細胞の分化と機能が抑制され、ひいては骨形成が充進する。その発現には骨芽細胞のβ一カテニン経路が関わっている。通常、β-カテニンはリン酸化されプロテアーゼで分解されて低いレベルに保たれるが、Wntの存在下ではリン酸化経路が不活性化される結果、β一カテニンは細胞内に蓄積し、核内に移行し、OPGの発現を誘導する。
以上の骨芽細胞と破骨細胞の分化や機能を調整する各種因子の発現には、多くの外的あるいは内的要因が支配している。その中でもエストロゲンは、骨芽細胞の増殖・分化、破骨細胞の骨吸収能、骨髄ストローマ細胞やマクヒファージによる骨吸収性サイトカインの産生、Bリンパ球の増植・分化の調撃を行っており、さらに近年、成熟した破骨細胞に作用して、ERα遺伝子の発現を促し、その遺伝子産物のERαがエストロゲンと結合し、FASリガンドの遺伝子発現を促進させ、このリガンドが受容体FASと結合することによって、破骨細胞のアポトーシスが誘導されることも知られるようになり、これらからエストロゲンは、骨代謝平衡の調節因子の中心的物質であるといって過言ではない。以上から、エストロゲン欠乏は、①破骨細胞の骨吸収機能充進、②骨芽細胞化・機能亢進、③マクロファージ等による骨吸収性サイトカインの産生亢進、④Bリンパ球増殖・分化亢進、あるいは⑤破骨細胞のアポトーシスの回避のいずれか、あるいは幾つかが複合して生じ、ひいては高代謝回転型骨粗髭症を引き起こすことが類推できる。しかし、その本態はまだ不明である。この中で、①一④に焦点を当てた場合、骨粗髭症の発症メカニズムの中心をなすと考えられるのは、RANKL-RAMから開始される回路、あるいはWntによるβ−カテニン経路のいずれかの恒久的な異常による骨量の低下であろう。RANKLは1α2(OH)2-D3,IL-11,IL-6,PGE2,PTH等によって誘導され、VDRやgp130あるいはcAMPを介して発現される。エストロゲンは骨髄間葉細胞によるIL-6,IL-1,TNF−αのような骨吸収性サイトカインの産生と作用を修飾している。
従って、エストロゲンの欠乏がこれらサイトカインの発現に異常を起こさせ、これが骨髄間葉細胞によって誘導されて破骨細胞の分化・活性化・生存を支持するRANKLの発現の亢進や、Wnt/β−カテニン経路を介したOPGの産生低下を招き、これらが骨吸収の亢進に繋がるという仮説も否定できない。
さらに⑤を取り上げた場合、エストロゲン欠乏によるFAS遺伝子発現抑制の結果、破骨細胞がアポトーシスを免れて長期にわたって生存し、骨吸収機能を発揮し続けて骨吸収が骨形成を上回るという考え方も十分に成立する。
特別講漬
『高齢者の生活の質(QOL)維持と骨の健康管理』
中村利孝先生
産業医科大学整形外科学教室教授
日本骨粗鬆症学会理事長
骨粗鬆症による骨折は、疼痛と運動障害の原因となるだけでなく、身体つきを変化させることにより生活の質(QOL)低下の原因となる。骨密度以外の骨折危険因子の存在が明らかになり、骨折危険性の評価には、骨密度とともに骨密度以外の要因も考慮することが必要になってきた。2003年にWHO(世界保健機関)では、骨密度とともに、臨床的骨折危険因子とよぱれる骨密度以外の要因を含め骨折危険性を総合的に判断して治療を開始することを提唱した。わが国のガイドラインも、これに従っている。
骨密度以外に骨強度に関連する要因としては、コラーゲン架橋分子の代謝に関連して、動脈硬化の指標である血清ホモシステイン増加例に骨折発生が多いという観察がある。また、架橋分子として糖代謝と関連するペントシジンが増加することで骨強度が低下するという指摘もある。脂質代謝異常が骨脆弱化と関連するという基礎的、臨床的観察もある。さらに、1型糖尿病でビスフォスフォネートの服用で糖代謝関連の指標が改善したという報告もある。これらの事実は、骨の代謝は全身の代謝と相互作用があり、メタボリックシンドロームと総称される全身の代謝異常症は、骨のコラーゲン代謝に影響をおよぼして高齢者の骨脆弱化に関与している可能性を示唆している。
加齢にともなう骨強度の低下には、ミネラル代謝とともに、コラーゲン代謝など蛋白性成分の代謝を介して、全身の代謝異常症と関連することが明らかになりっつある。一方、ビスフォスフォネートを中心とした骨代謝の制御は、骨折を防止するとともに、死亡率を低下させるという事実も観察されるようになってきた。高齢者のQOL維持を目標とした全身の健康管理には、骨の健康管理が必須な時代になりつつある。
シンポジウム
「歯科骨粗鬆症の診断基準の確立に向けて」
S-1『顎骨骨密度と骨粗髪症』
高石佳知先生
日本歯科骨粗鬆症研究会副理事長
骨粗鬆症は、世界的な健康問題である。欧米、日本を含めると、7,500万人以上が骨粗鬆症に罹患している。骨粗髭症の予防と治療ガイドライン2006年版によると・わが国でも急速な高鈴化により、骨粗鬆症の患者は年々増加し、現在1,100万人と推測されている。骨粗鬆症は骨折を引き起こし、寝たきり、介護問題が重要な杜会問題となり、その予防、治療対策が急務である。
顎骨の骨喪失は、骨粗鬆症の低い骨密度(BMD)に関連し、全身性の骨粗鬆症では、顎骨、特に歯槽骨頂部に最初に骨粗鬆症徴侯が発現し、歯周病原因菌の感染が起こると、健常者に比べ歯周病は急速に進行する。また、骨粗鬆症患者は、歯の喪失数が健常者より多いことから、歯を支える歯槽骨吸収の予防と治療方法、特に診断方法として、歯槽骨BMD評価方法の確立が、現在最も必要とされている。
新たに開発された歯槽骨BMD評価ソフトウエアー(国際特許出願中)は、今回の企業展示でも展示されているが、歯槽骨(BMD)の評価方法として極めて有用であることから、歯科領域での骨粗髭症対策に役立つと考えられる。
現在、世界的な問題となっているビスフォスフォネート(BP)関連顎骨壊死患者(BRONJ)の歯槽骨BMD評価症例も供覧したい。BP使用量の増加により、今後BRONJ症例が加速度的に増加すると考えられている。BRONJの発症予防、診断のEBMの一っとして、今回の顎骨(BMD)評価が検討に値すると考えられる。
シンポジウム
「歯科骨粗鬆症の診断基準の確立に向けて」
S-2『骨粗鬆症診療から見た歯』
三木隆己先生
大阪市立大学医学部老年内科学(老年科・神経内科)教授
高齢者の余命は栄養状態に大きく影響される。いかに飽食の時代とはいえ、高齢者にとってはいかに栄養状態を維持するかが重要である。う歯や歯周病などの口腔疾患は歯の喪失の大きな原因となり、消化器系疾患や消耗性疾患のみならず、歯数の減少が消化吸収能、さらには食欲に影響し、高齢者の予後を悪化させる要因となる。骨粗鬆症では歯槽骨の歯の保持能が低下し、歯の数が少ないとの考えがある。
また、歯が悪いから栄養状態が悪くなり骨粗鬆症になるとの考えもあり、互いに関連性があると考えられる。
骨粗鬆症に対する治療が歯槽骨の維持、さらには歯の保持に役立つ可能性があり、歯科と医科との共同研究もさかんになりつつある。歯周ポケット内の浸出液には種々のサイトカインの存在が明らかにされ、歯槽骨の骨保持能力低下に関連している可能性も考えられる。すでに、歯槽骨密度を評価する方法が発表され、ビフフォスフォネートが歯周炎の進行を抑制する可能性を示唆する報告もある。現在、骨粗鬆症の予防と治療のガイドラインが作成され、未解決な問題も残されてはいるものの、ピフフォスフォネートの治療が確実に広がりつつある。特に、週1回製剤の登場により、投与できる患者の範囲は拡大し、治療中断の防止にも役立っている。
高齢化杜会を迎え,骨粗鬆症と歯周病など歯に関係した臨床研究が注目されるようになってきた。医科においては歯科的立場を、歯科においては医科的立場も考慮しながら診療する必要がある。






